JA全農山形のごはん価格比較が根本的に間違っている件

JA全農山形が出した意見広告に批判が殺到しているらしい。

「それでもお米は高いと感じますか」広告物議 JA全農山形「適正価格考えるきっかけに」(2025.5.12 産経新聞)

JA全農山形の意見広告は4月、見開きの全面カラー広告として地元紙に掲載した。「今日のあたりまえが、未来へもつながるように」と題した内容で、「ごはんお茶碗1杯の価格は約49円」と紹介し、「菓子パン約231円、カップ麺約187円、ハンバーガーは約231円」と比較した上で、「それでもお米は高いと感じますか?」と提起。「未来につなげる持続可能な価格を、皆さんも一緒に考えてもらえませんか?」と訴えている。

これに対してSNSでは、「米価を下げる努力を放棄して米価を正当化しようとしている」「米価を釣り上げている元凶のくせに」などの批判的な投稿が相次いでいるそうだ。

こんな「おまいう」な広告に批判が集まるのは当然と言えるが、僕はもっと根本的なところに違和感を感じた。 この広告はそもそも比較対象の取り方がおかしいのだ。

「ごはんお茶碗1杯」の価格を「菓子パン」「カップ麺」「ハンバーガー」と比較しているが、 これらは手間と具材のコストをかけた加工食品だろう。 菓子パンにはクリーム等が、 カップ麺には具やスープが、 ハンバーガーには肉のパティや様々な具材が入っている。 作る手間だってある。

「シンプルな主食」と「手間と具材のコストをかけた加工食品」を同列に比較していいのだろうか?

いいわけがない。 手間と具材のコストをかけた加工食品のほうが高いに決まっているだろう。

「ごはんお茶碗1杯」は「ただのごはん」だ。 「ただのごはん」と比較するなら、「ただのパン」「ただの麺」でなければ公平な比較にはならない。

「ただのパン」なら、食パンあたりだろう。 食パンは一斤で安いものだと100円くらいで買えるが、まぁ120円としておこう。 カロリーベースでお茶碗1杯分であれば、一斤の1/4程度なので「30円」となる。

「ただの麺」なら、うどんあたりだろう。 うどん1玉は数十円で買える。 まぁ「30円」としておこうか。

そうやって公平な比較をすれば、「ただのごはん」であるごはんお茶碗1杯が「49円」というのは「高い」という結論になる。

食パンやうどんと同等が適正価格とするならば、ごはんお茶碗1杯は30円くらいが妥当だろう。

ついでにここから米5kgの適正価格を算出してみよう。 調べたところ、米5kgでお茶碗73杯分のごはんが炊けるらしい。 すると単純計算ではあるが、「米5kgの適正価格=30円×73=2190円」となる。 間違っても5kgで4000円などという数字にはならない。

というわけで、この広告にある「それでもお米は高いと感じますか?」という問いかけに対しては、「はい、高いと感じますし、実際に高いです」が答えだ。

米の高さをごまかすために、こういう不公平な比較を意図的にやっているんなら、ちょっとタチが悪いなと思う。

JA全農は、「適正価格を考えるきっかけに」などとのたまう前に、「適正な比較とは何ぞや」ということをよく考えてほしい。

タイトルとURLをコピーしました