事実を論拠としていても結論が正しいとは限らない

yellow and black metal frame

はじめに

ネットが発達して、 色々な人が色々な主張を繰り広げる世の中になりました。

それ自体はよいことだと思いますが、 正しい言説を見分けるのも一苦労ですね。

そんななか、 「ファクトチェック」などという試みにみられるように、 「事実かどうか」というのは、 正しい言論かどうかの一つのポイントかと思います。

ただし、これには注意が必要です。 「事実」と、そこから導かれる「結論(主張)」はイコールではないからです。

「事実を論拠とした話」は一見正しいように感じられますが、 必ずしもそうではないということを示したいと思います。

事実を論拠としていても結論が正しいとは限らない

よく、 「事実と意見を区別しろ」 と言われます。

事実は起こったことそのもの、 意見は人の考えです。 これを区別しましょう、というのはよくある話です。

ただ、 「事実を言っているのだから自分の結論は正しい」 という形で主張をする人がいますが、これは誤りです。

事実と結論の関係を図解してみました。

まず、事実が正確であるということは大前提とします。 事実が事実でなかったとしたら、正しい正しくない以前の問題になります。

それで、事実が正確であったとしても、 結論に至るまでの解釈やロジックは自由に組むことができます。 また、事実自体の選択も自由なので選択が偏れば結論も偏ることになります。

つまり、 いくら事実を元にしていても、 どういう事実を選択し、 どういう解釈を加えたか、 で結論は全く変わる ということです。

よって、事実(データなども含め)を論拠としていても結論が正しいとは限らないのです。

例えば、 新聞社などのメディアやジャーナリストなどが、 結論ありきで記事を作成するとこれに陥りやすくなります。 結論ありきで偏った事実を選択し、 結論ありきの解釈を行い論理を組み立て、 おかしな結論を導くというのは、 よく見られる光景です。

他にも、某大学教授がネットで、 「これは僕の意見ではなく事実だ」などと強調しながらデータ(事実)を示し、 そこからトンデモな主張(結論)を展開し正しさを主張していましたが、 これなどは事実の正しさと結論の正しさの違いを 意図的に混同させている典型と言えるでしょう。

もちろん事実を論拠とすることは、 正しい言説を組み立てる上で大事なことです。

しかし事実を論拠としているだけではだめで、 適切な事実の選択と、適切な解釈が揃って、 初めて適切な結論が導かれる のです。

この点を意識しておかねばなりません。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

本コラムが正しい言説を見分ける一助になれば幸いです。

タイトルとURLをコピーしました